遺言を残すメリット
遺志の尊重
遺志を自分で記述するものです。
遺言を残すことの最大のメリットは、自身の生前の思い・気持ちを明確に表明できることです。
遺言書によって、財産の分配について故人の意思が尊重され、故人が希望する通りに財産が処理される可能性が高まります。
また、相続人以外にも財産を渡すことが可能となります。
家族間の紛争の防止
遺言書により、相続人同士の争いを未然に防ぐことが可能となり得ます。
また、遺言書で明確な指示をすることで、遺産分割に関する不明瞭な点や誤解が生じる可能性を低減し、手続きにおける遺族の負担を軽減する効果も期待できます。
相続手続きの迅速化
遺言において遺言執行者を決めておくことで、遺言執行者が遺言に基づいた遺産分割を行うため、相続手続きが迅速に進行し、遺産の分配が効率的に行われる可能性が高まります。
遺言の種類
自筆証書遺言
遺志を自分で記述するものです。
自筆証書遺言は証人が不要であり費用がかからないため、手軽に作成できるというメリットがあります。
また、財産目録については、自書でなくてもよくなりました。
しかし、自筆証書遺言は、内容が不明瞭であったり形式的不備の存在から、無効になる可能性があり、争いの種になりやすいといったデメリットがあります。
また発見後に、隠蔽・破棄されるという危険もあります。
もっとも、法務局が遺言書の原本を預かってくれる制度(遺言書保管制度)が始まったことから、法務局に預けることによって紛失・隠蔽・破棄といったことを防止できるようにはなりました。
なお、法務局に預けない場合には、発見後に検認手続きを行う必要があります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言です。
公証人が遺言者の思いを確認したうえで、厳格な形式に従って作成するため、無効になりにくいというメリットがあります。
また、公証役場で原本を保管してもらえるため、紛失・隠蔽のリスクがなく、発見後の検認が不要といったメリットもあります。
さらに、公証人に病院や施設に来てもらって作成することも可能です。
秘密証書遺言
内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で認証してもらえる遺言のことです。
自分で用意した遺言に封をした状態で公証役場に持っていきますから、遺言の中身が他人に知られることはありません。
しかし、実務では殆ど使われておりません。
特別方式遺言:遺言者の死亡が迫っている場合や遺言者が一般社会と隔絶した環境にあるため、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言といった通常の方式による遺言ができない場合に限って認められる遺言です。
遺言執行者として弁護士を指定すべき理由
遺言の内容を実現する者を遺言執行者と言います。
遺言の中で遺言執行者を誰にするかを指定することができますが、遺言執行者に弁護士を指定することには次のようなメリットがあります。
法的専門知識
遺言を実現する際に、遺言執行者がいないと、通常は相続人が手続きをすることになりますが、大変な作業となることがあります。
また、預貯金の手続きや不動産の登記など法的専門知識がないと複雑で負担が少なくなりません。
そのため、法的専門知識を持っており、相続法や遺言執行に関する法律に詳しい弁護士を指定することにより、遺言の執行が法的に適切に行われることとなります。
また、財産評価、債務処理、財産の売却や分配など、法的手続きを遵守しながら最適な方法で遺産を管理することも可能となります。
家族間の紛争の防止
相続人のうちの一人を遺言執行者に選任すると、本当に公正に手続きをしているのかといった不満が生じるリスクがあります。
また、遺言の内容が複雑であったり、相続人でない人への遺贈がある場合に、中立的でない人物が遺言執行人になると、他の相続人らから不平や不満が生じ、対立や紛争が生じてしまう場合があります。
そこで、中立的立場である弁護士を遺言執行人にすることで、これらを避けることが可能となります。
相続人の疑問への回答
弁護士が遺言執行人である場合には、相続人が法的疑問を抱いた場合に正確な回答を提供することが可能です。
その結果、相続に関する疑問や不明瞭な点の解決に役立ち、生前の思いである遺言書の実現に資する結果となり得ます。